イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─(東京オペラシティ アートギャラリー)に行ってきた 2018.7.29
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新宿から1駅の東京オペラシティ アートギャラリーで開催しているイサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─に行ってきました!
イサム・ノグチは知らなくても、代表作であるおしゃれな照明器具はインテリアショップなどで見かけることが多く、「ちょっと不思議なオブジェ(彫刻)」も街中に設置されているので、作品を見ると「あ、あれね。」と分かる人も多いのではないでしょうか。
私も詳しく知らず作品を見かけるたびに「なんか不思議」「なんかかわいい」と気になっていたので展覧会にきてみたところ、イサム・ノグチは「不思議オブジェの芸術家」ではなく、もっともっとすごい「空間の彫刻」をたくさん残した人だということが分かりました……!
イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─開館時間・混雑状況
<開催概要>
会期 2018/7/14~ 9/24(月・休)
会場 東京オペラシティ アートギャラリー(京王新線初台駅直結。新宿から1駅)
開館時間 11:00 ─ 19:00 (金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日 月曜日(但し祝日の場合翌火曜日)、8月5日[日・全館休館日]
入場料 一般 1,400円(1,200円)、大学・高校生 1,000円(800円)※中学生以下無料
<混雑状況>
日曜日の16時頃鑑賞しましたが、全然混雑していません。チケット購入や入場に待つこともなく、のんびり自分のペースで鑑賞することができました。
公式HP: http://www.operacity.jp/ag/exh211/
イサム・ノグチとは?
イサム・ノグチは彫刻をはじめ舞台美術や家具や照明器具のデザイン、陶芸、庭園デザインまで、幅広いジャンルで活躍した芸術家です。
ノグチの彫刻はぱっと見何か分からない「抽象彫刻」が多いのですが、その創作にあたって常に「身体」を意識し続けていたそうです。そうした意識が、子供のための遊具デザインやランドスケープといった人間をとりまく環境へ向かい、「空間の彫刻」である庭園デザインなどへと拡大していったようです。
ここからは、私が特に良かったと思ったところを紹介していきます。
伸びやかな素描「北京ドローイング」
今回の展覧会で、国内初という「北京ドローイング」という素描のシリーズが展示されています。「うつむく僧」「横たわる男」「傾く男と少年」など、計8点を一挙に見ることができます。
20代の半ばで北京に滞在した際に手掛けたものだそうで、大きな紙に毛筆、墨のシンプルな線で勢いよく大胆に描かれた素描です。ミケランジェロやレオナルドダヴィンチの繊細かつ写実的な素描とはまったく異なり、伸びやかで流れるような線で描かれた人体。1秒前、1秒後の動きを想像掻き立てられるような、今にも動き出しそうな生命感にあふれた作品でした。
庭好き必見! 空間の彫刻と石の彫刻
イサム・ノグチは最晩年に至るまで庭や公園、ランドスケープなど、大地を素材とする多くの作品を残しました。特に秀逸なのは、「チェイス・マンハッタン銀行プラザのための沈床園」。ノグチ自身が「私の竜安寺」と評したというだけあり、ビル群の中にありながら、時間が経つのも忘れて気付いたら眺めいってしまう、枯山水の静謐さを思い出させます。模型と写真と映像で紹介されているので、リアルにその空間を感じ取ることができました。
「チェイス・マンハッタン銀行プラザのための沈床園」の写真はこちら
また、「ミラージュ」「アーケイック」「不死鳥#1」といった花崗岩、大理石、玄武岩など数々の石を用いた彫刻も必見。石ならではの冴え冴えとした冷たい質感に、自然の力を感じさせるゴツゴツした不規則で荒々しい表面、さまざまな石の個性を見ることができ、意外な魅力に気づかされます。とはいえ、これらの作品は「その空間にあって」初めて完成するものだと思うので、一度は現地で見てみたいですね。(ほか、今回展示されていた主な作品は作品リスト参照)
イサム・ノグチについてよく知らないまま行った今回の展覧会ですが、オブジェ(彫刻)、素描、庭、石と幅広い作品を一度に楽しめるし、自然の素材が多いのでぼーっと眺めていると心が穏やかになる、とても素敵な展示でした。
最後に、イサム・ノグチの年表がまとめられていたのですが、初めての個展では酷評され、日系アメリカ人であることを理由に原爆慰霊碑が実現せず、他にも実現しなかったプロジェクトもたくさん。困難も多かった人のようでした。芸術家としては珍しいことではないかもしれませんが、やはり一人の人間として、逆境の中でも作品を作り、世に出し続ける熱意と努力に、感服する思いです。イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─展、気になった人はぜひ行ってみてください!
イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─|東京オペラシティアートギャラリー
イサム・ノグチ ─ 彫刻から身体・庭へ ─展示作品リストの一部
※備忘メモ※
【1】 身体との対話
■北京ドローイング(横たわる男、横たわる女、座る男、うつむく僧、重なり合う三人の像、傾く男と少年、立つ女) イサム・ノグチ庭園美術館
■マーサ・グラハムの舞台「ヘロディアド」のための舞台装置 イサム・ノグチ庭園美術館
■伊藤道郎 イサム・ノグチ庭園美術館
■ジョエラ・レヴィの肖像 香川県立ミュージアム
■ラジオ・ナース 香川県立ミュージアム
■歓びの日 イサム・ノグチ庭園美術館
■玉錦(力士) イサム・ノグチ庭園美術館
■ヘロディアド(映像)
【2】 日本との再会
■別嬪さん イサム・ノグチ庭園美術館
■慶応義塾大学萬來舎 慶応義塾大学
■原爆慰霊碑の習作模型 イサム・ノグチ庭園美術館
■広島の鐘の塔 イサム・ノグチ庭園美術館
■あかり 香川県立ミュージアム
■暑い日 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
■かぶと 一般財団法人草月会
■三本足の花器 一般財団法人草月会
【3】 空間の彫刻 ─ 庭へ
■プレイ・マウンテン イサム・ノグチ庭園美術館
■この責め苦しめられた地球 香川県立ミュージアム
■国連のためのプレイグラウンドの模型 香川県立ミュージアム
■チェイス・マンハッタン銀行プラザのための沈床園
■死すべき運命 横浜美術館
■クメール 香川県立ミュージアム
■夢窓国師の教え 香川県立ミュージアム
■スライド・マントラの模型 イサム・ノグチ庭園美術館
■カリフォルニア・シナリオ
■イサム・ノグチ庭園美術館
【4】自然との交感 ─ 石の彫刻
■ミラージュ イサム・ノグチ庭園美術館
■アーケイック 香川県立ミュージアム
■不死鳥#1 イサム・ノグチ庭園美術館
■空間のうねり#2 イサム・ノグチ庭園美術館
■下方へ引く力 横浜美術館
■リス 香川県立ミュージアム
■タイム・アンドスペース 香川県立ミュージアム
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